コンビニエンスストア大手のミニストップ(本社・千葉市)は21日、来月1日から千葉市内の全43店舗で成人向け雑誌の販売を中止し、来年1月1日からは全国の全2245店舗で実施すると発表した。記者会見した藤本明裕社長は「誰でも安心して使える店づくりをする」と述べた。

情報源: ミニストップ:藤本社長「誰もが安心に」 成人誌販売中止

私が青少年だったころを思い出してみる

本題に入る前に私が小学生だった40年前の話をしよう。当時成人向け雑誌と呼ばれるものというのはそう簡単に目に入るものではなくまた、手に入るものでもなかった。売っているところと言えば本屋。小学生の頃は愛読していた「ドカベン」や「サーキットの狼」「リングにかけろ!」あたりの新刊が出ると本屋に立ち読みしに行ったものだ。ふと、店の奥に足を運ぶと何やら悩ましい本が並んではいたが、すべてビニールで包装してあった。俗に「ビニ本」と言われた成人向け雑誌。小学校高学年ともなればやはり気にはなる。横目でチラチラと見ていたものだ。ちなみに私はいたって正常な男子であったことを念のため付け加えておこう。

れ以外には自動販売機が人気の少ないところに設置されていた。昼間、明るい時はアルミホイルに覆われているようで全く何を売っているのかわからない。しかし日が暮れて辺りが暗くなるとヴェールに包まれた中身がライトに照らされ何を売っているのかが浮かび上がってくる。塾の帰りや中学時代の部活の帰り道。わざわざ遠回りしてその前を通る。心なしか歩く速度がそこだけ遅くなったのは私だけではないだろう。

40年前はそれほど販路が狭かった成人向け雑誌だが、コンビニの出店によりその販路が広がったのは言うまでもない。筆者も店をやって15年以上になるが、「もしや万引きか⁉」と思われる挙動不審な中学生を何人も見かけた。彼らは万引きを企んでいるわけではない。成人向け雑誌以外の週刊誌の類でも女性の裸は拝める。その週刊誌を手に取ろうか取るまいか、激しく葛藤している姿が挙動不審に見えるだけのこと。同じ道を通ってきた先輩としては、怒られるかもしれんけど気持ちはよくわかると言ってあげたい心境である意味、微笑ましくも思える。もちろん仕事柄、成人向け雑誌を手に取ろうという青少年には「いけないよ。」(心の中で「気持ちは痛いほどよくわかるけどね」を付け加えてしまう)とお断りしていますよ。

利用客から「子供の目線で困る」との声はどのくらいあったのだろう?

 この取り組みに関してはあくまで自治体の判断で企業に要請をする自主規制的な意味合いが強く、正直なところコンビニ各社は乗り気ではない。なぜ乗り気でないのかは後に書くが、「子供の目線で困る」という声はいったいどのくらいあったのだろうというのが筆者の素朴な疑問。

 15年以上コンビニオーナーとして店に立っているが、筆者はこうした声を一度も耳にしたことがない。この辺はコンビニオーナーさんの意見を聞きたいところである。いずれにしても「青少年の健全な育成」にはよろしくないという大人の声が少なからずあるということなのだろう。世の中、色々な団体もあるし、ある意味政治色の強い団体あたりが声を上げるとそこから票をもらっている議員さんは議会に提案しなきゃならんだろうし、そういう流れで生まれてきたものであろうことは推測の範囲を出ないが大きく間違ってもいないだろう。

 2年前大阪・堺市でも成人向け雑誌に目隠しをする取り組みあった。当時は女性や子供の人権VS表現の自由の構図を作り、マスコミが煽ったのも記憶に新しい。この時は「協定」という形で堺市とファミリーマートが取り組んだのだが、その後どうなったのかはあまり報道されていない。この辺はご存知の方がいらっしゃれば、コメント欄で教えていただけばと思っている。

 千葉市とミニストップの取り組みは堺市のように人権問題や憲法違反だ的な議論が起こると面倒だからいっそ売るのをやめてしまおうという結論に至ったのであれば、果たしてこの取り組みが業界、そして加盟店オーナーのプラスになるのか?今後の動向が気になるが結論はある程度見えていると思う。

売上アップには欠かせない「マグネット商品」の品ぞろえ

都心のオフィス街のお店や新店は極力雑誌什器を減らし、商品棚や催事ゴンドラに切り替える店舗レイアウトが目立ってきている。前者は立地上、雑誌というアイテム、特に成人向け雑誌はニーズがない。さすがに会社の同僚に見られるかもしれない環境でそれを買おうという気にはなれないのが正直なところだろう(笑)だから売れない。新店は世の中の「紙媒体離れ」の影響からそのスペースを立地に合わせた品ぞろえを強化する売り場を作るために使っている。

売上の公式は簡単で「客数」×「客単価」。お店はこの二項目をどれだけアップさせるかが売り上げのカギになる。そのために新商品を投入したり、今やどこのチェーンでもやっているが700円買うとくじが引けるなんてキャンペーンはそもそも、これらをアップさせるための施策でやっているわけである。

しかし「客数」のアップはどうしても外部要因が好転しない限りなかなか望めない。接客やクリンリネスをしっかりやれというのは接客レベルが元々低いお店なら効果はあるが、そこそこのお店ではどちらかというと今いるお客を逃がさないための手段に過ぎない。やはりどのお店もいかに「客単価」を上げるのか?本部も含めて力を注いでいるのはその部分であることは間違いないだろう。

客単価を上げるために必要なことのひとつに「マグネット商品」の品ぞろえの強化。「マグネット商品」とは集客力のある商品。タバコや酒類を始め、弁当やソフトドリンクがそれにあたる。ここの品ぞろえの強化はどのチェーンでも力を入れているのは誰の目で見てもわかる。

店によってはそれ以外のマグネット商品もあるだろう。学校の近くであれば文具がそれにあたるだろうし、海沿いの観光地立地なら浮輪や日焼け止めなんかもそれにあたるだろう。私の店は住宅立地。特に4,50代の男性の単身世帯がすむアパートや団地に取り囲まれている。マグネット商品は酒類やタバコといったものだが「成人向け雑誌」もその類といっていいだろう。

「成人向け雑誌」購入者は高客単価が多い現実

 コンビニ利用者の客層は立地によってバラつきはあろうがどこのチェーンも50代以上の利用者の割合が最大である。コンビニ誕生時は10代、20代だった人がそのまま歳をとっても利用し続けているヘビーユーザーが多い。そこに遠くまで買い物に行けないお年寄りが遠くのスーパーよりも近くのコンビニにシフトしてきているのも大きな要因であろう。

何といってもこの客層のありがたいところは「客単価」が高い。私のお店では3,000円、4,000円と購入されるお客様が非常に多く見受けられる。カゴいっぱいに商品を入れてレジカウンターに来るとそこには食品だけではなく酒類や生活必需品、タバコのカートン買い、そして男性客のカゴには「成人向け雑誌」が入っているケースが多い。

 下世話な話だが、「成人向け雑誌」も人それぞれ好みがあるだろう。当然、気に入った雑誌があればそこで必要な買い物はすべて済ませようとする。そういうお客を取り込むのならば自然と「成人向け雑誌」の品揃えも店選びの重要なポイントになる。売り場拡大はなかなか難しいにしても、それを目隠ししたり、品揃えをしないとなれば、店選びの段階でその店は脱落してしまう。客単価の高いお客をみすみす手放してしまうリスクがあるのだ。どのチェーンも引っかかっているのはこの部分だろう。

24時間営業見直しと似た構図

 上客をみすみす手放すリスクを背負いこむことに一番先に手を挙げるチェーンはまずないだろう。今回のミニストップが手を挙げたことに驚いた同業者も多い事だろう。確かに「成人向け雑誌」は売り上げ構成比から見れば微々たるものかもしれないが、もう一歩突っ込んでみれば、それに様々な商品が引っ付いて来て客単価に貢献している役割がある。一つをやめることでその影響が様々な方面で出てくるだろう。

 この構図はコンビニ業界の課題でもある24時間営業の見直しの議論と似ている。深夜の売り上げ、客数は微々たるものだからその間は店を閉めるべきでは?という話だが影響はその部分だけではないと言われている。深夜を閉めれば昼の売り上げにも影響がある、店舗オペレーションの問題といったところに波及してくる。

 24時間営業の見直しはファミリーマートが積極的に取り組んでいるようだが、他のチェーンはそれを見守る状態。お手並み拝見といったところだろう。24時間営業をやめれば売上は確実に落ちる。その責任をあえて被ろうとする経営者がいるだろうか?

 「成人向け雑誌」おいても同様だろう。ミニストップは来年早々に全国2,200店舗で実施するとのことだが、これで売上が落ちた場合経営陣の責任問題に発展するであろう。そこまでしてこの問題に取り組む意図は筆者の貧弱な頭脳では理解できない。

東京オリンピックも影響か

 2020年に東京オリンピックが開かれる。あと3年を切っている。今でさえも訪日外国人の数が急増しているのだから、オリンピックともなれば日本各地の街に外国人の姿が増えるであろう。

 最近では訪日客は観光地だけではなく、ネットから小ネタを集めて地方都市や郊外の街にも足を延ばしている傾向にあるようだ。私の住んでいる街にも無料の動物園があるせいか外国人の姿が多くなってきた。

訪日客が驚くのは駅前に燦然と光り輝くネオンを放つ「パチンコ店」、そして誰でも入れるお店に堂々と「成人向け雑誌」が売られていることだそうだ。

 政府や自治体も外国からのお客様をもてなすためにそうした日本の「恥部」を隠そうという動きも見受けられるが私はその姿にはなはだ疑問を感じる。こういった光景が「素の日本社会」なのだから、それを隠す必要はないと思う。

 「成人向け雑誌」も青少年の健全な育成や性犯罪を増長させる要因などとも言われている。しかし、日本は「安全な国」「治安の良さ」は先進国でも上位の国である。性犯罪(強姦罪)の発生率は先進国でも最も少ない部類に入る。「成人向け雑誌」を規制している国よりはるかにそういった犯罪が少ないのである。むしろ抑制されている方が犯罪の原因となっているのでないかという見方もできなくもない。何も欧米先進国に合わせる必要などないし、日本には日本の文化がある。そのままを見てもらえればいいのではないだろうか?

コンビニは全ての客層に「便利」であるべき

 果たして今回のミニストップの取り組みはどのような結果を招くのだろうか?非常に興味深い。だた筆者は決してこの結果は加盟店にはプラスにならないと断言できる。加盟店は慈善事業でやっているわけではない。生活も懸かっているわけだからその源泉である「売上」を下げる行為はプラスとは言えないだろう。

確かにこうした取り組みは世間的には聞こえがいいのかもしれない。でも「客離れ」を呼びおこす行為が本当に「便利なお店」といえるのだろうか?

 「成人向け雑誌」が置いてあるのはすでに「コンビニの風景」として定着しているのだから、それを置いてあるからと言って「客離れ」を起こすことは考えにくい。むしろそれをなくす方が間違いなく客離れが起こるであろう。

 その分女性客や子供が増えれば離れていった客の売上を取り戻せるといった意見もあるだろう。しかし財布の紐の堅い女性客に高客単価を期待できるだろうか?

 例えば1日の来客数が1,000人のお店で客単価600円。高客単価のお客が逃げて客単価が30円落ちて570円になったとしよう。1日の売り上げは30,000円落ちる。この30,000円を取り返すにはもう一方の「客数」を伸ばすしかない。30,000円を570円で割ると約52人。つまり客数を5%伸ばさなきゃならないことになる。客数を5%伸ばすのは大変なことであることはコンビニオーナーさんなら察しがつくであろう。これを本部が補填でもしてくれれば問題はないだろうが、店の立地によってその影響の大小が出てくるはずなので一律どうするってことにはならないだろう。結局、損をするのは加盟店なのだ。

 本部にとって収入の柱は間違いなく加盟店から上がってくる売上金である。その加盟店に損をさせる施策を打つなんてことは、青少年の育成以上に大きな問題になるだろう。そこに足を踏み入れる勇気などないだろう。

 だから、だからこそ今回のミニストップの取り組みには注目したい。成功すればコンビニの品揃えにも大きな影響が出てくるであろう。ただし、何度もいうが絶対にプラスにはならない。フランチャイズ形式のビジネスモデルが継続する限りは。

 

 

 

 

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